TSCAに行ってきた。

天王洲橋からの景色。早朝まで雨が降っている音が聞こえていたので今日も雨かと思いきや、日中はまるっと晴れ渡っていた。TSCAに行くときはかならず雨の日だったが、今日はついに濡れずにギャラリーに行けた。

岡崎乾二郎の小さな展覧会を見てきた。会場はTSCAのプライベートスペースに展示があって、ちょうど私だけしか予約をいれてない時間帯だったみたいで他に人がいなくて、ギャラリーのオーナー(だと思うが間違っていたら申し訳ないです)の染谷氏にありがたくもいろいろお話を聞かせてもらいながらの贅沢な鑑賞となった。

2/22の猫の日から開始された展覧会らしく猫の作品ばかりが展示してあった。《whoʼs who》19点は(そのうちの数点がポストカードにもなっていて、2/23に私も飾ったがやつ)、染谷氏からこれが機械で描かれていると教えてもらって、これもそうだったのかと今さらびっくりした(T.T.T.Bot)。あとは今回の目玉?の《Who Knew Cat Nowhere》ボックスの絵本と彫刻と小さなドローイング作品に、数十年ぶりらしいブロンズ彫刻が1点(タイトルが書いてあったが、覚えきれなかった)、そして最新作のドローイング(タイトル未定とあった)が8点展示されていた。

いろいろな猫が展示されてあったが、世に言う猫の液体性が一息になぞられたような絵筆の線やブロンズの塊にすてきに落とし込んであって、どれもこれもシンプルに見えてあー猫だなーと感嘆してしまうのだが、そのなかにあっても新作の8点はひさびさに岡崎氏の天才ぶりを直に感じる驚異の作品となっていた。これは本当にすさまじかった。作品としては紙に、立体作品に使う粘土を絵具と溶かしたもので猫のさまざま形態がのっぺりと描かれてあり(絵自体の猫は非常に平面的といっていい仕上がりになっていた)、そのうえに細めの縄やさらにほそめの麻紐っぽいものが植物のつるのように自由に這わせてあるのが直接接着されてあり、それが深めのボックス型の木枠におさめてあった。ボックスは壁ではなく床に置かれて見下ろす形で展示してあった。

ボックスの大きさが微妙に紙のサイズより小さく作られてあって、そこに紙をおさめてあるため、紙片のあっちこっちが凸凹に湾曲して、奇妙な立体感を演出していた。

その紙の立体感と、さらに粘土で描かれた猫の上を這う縄や紐からは、まさに紐と戯れる猫の激しい運動そのものが浮かび上がって見えてくるという驚異としか言いようのない作品となっていて、これにはもう興奮しかなかった。ピカソのギターとデュシャンの階段をおりる裸体を足しただけでじゃ足りないくらいすごかった。それら新作も含めて今回の作品は大半が購入可能となっていて、値段も岡崎氏のネームバリューでいえばかなり抑えられた価格ではあった(2/22にちなんだ洒落た価格設定になっていた)。正直買えない金額ではない、2か月くらい質素に暮らせば買える金額ではあったんだが、迷いに迷った末に購入を見送ってすごすごと帰ってきたのだった。今もまだ後悔がのこっている。買う買わないは置いておいて、私のウサギ小屋レベルの部屋では飾る場所がもうないんだよな…あと岡崎作品はポンチ絵を1点飾っているので、いろんな作家の作品を飾って楽しみたい私としては、そこも迷いポイントのひとつではあった。もしポンチ絵を買っていなかったら、間違いなく買っていただろう…

(というかそれで考えると10年くらい前とはいえポンチ絵ってめちゃくちゃ安価に設定されてあったんだなと改めて思う。新作ドローイング1点でポンチ絵6点くらい買える価格じゃなかったか?)

まだ期間はあるので、チャンスはある。売り切れてなければ。新作8点は3点が売約済だったが。というかそういうの抜きにしてももう一回見にいきたい。