朝一でカラーパープルを鑑賞。

数日前の三宅さんのブログで「地雷系ファッションの女子」というのが出てきていたが、はじめはネガティブなファッション表現なのかと思ったが、どうもそうじゃないっぽかったのでイメージ検索してみた。なるほど今はこういうのが流行っているのか、地雷系というとメンヘラから来ている表現だろうから、そういうのがポジティブに使われだしているというのは隔世の感があるなーなどと実におじさんっぽい感想を抱くのだった。

 

 

『てのひらたちの蜂起/法規』について、前回はわきのあまい話になっていたかもしれない。書き始める前は5回くらいで終わる予定だったんだが、書いているうちにあれもこれもと気づきが増えていくのを取り込んで書いているので、全体的にまとまりが欠けているのは仕方ないと思ってほしい。

27ページの「彼女の部屋」と「彼の部屋」だが、この2つのブロックはそのまま「部屋」と「彼女/彼」で対応しているように見える。しかし「彼女の部屋」の読点は、「水泳!」にも「27」にも接続可能なことを考えると、じっさいのところ27ページの詩を読む組み合わせは何通りあるだろうか。日本語記述の法規としては文末に読点がくるのは違法となるので、「彼女の部屋」が最後に来ることはないと仮定しよう。また「27」も文章を締めるような形には適していないように思われるので、こちらも最後に来ることはないとしよう。学のない私ではこんなときにスマートに正解を導くような計算式は思いつかないので、紙に書き出して数を数えていくのだが、数え間違いがなければ27ページの詩は12通りの組み合わせで読むことができる。どの読みが正しいのかは不明なままだが、このようなランダム性は、カバー上のバラバラになって漂っているタイトル、詩人の名、出版元の名と反響するものがあるのかもしれない。

さて幾通りも読み筋のあるこの特異な詩集のなかで特に複雑だと思われる27ページの詩のひとつの読み筋、明晰判明な真に至るひとつの読み筋を提示して終わりにしたい。

「彼女の部屋」「彼の部屋」(後者は「部屋の彼」としておいた方がよかったかもしれない)は、それぞれが長い一文となっており、その文章がなにをどう示しているのか読み込むのはとても難しい。私の感性ではほんの一部を抜き出して意味づけしていくことくらいしかできそうにない。「彼女の部屋」には「ピレネー山脈アルプス山脈を下山」という表現がある。これらの山脈がどこにあるかみなさんはおわかりだろうか。地球にあり、そして月にもある(繰り返し、折りたたみのテーマ)。この詩集には宇宙にまつわる語彙がいくつか使われているが、ここでも地に足をついていたと思っていたら実は38万キロも彼方の宇宙にもいてふわふわと浮足立つ感覚がないだろうか。「彼女の部屋」では「占星術」も使われており、より宇宙の感覚に足が浮きそうではある。

一方「彼の部屋」では「一週間に四度、日を追加しつづけ、三月五十一日に進める」とある。なぜ一週間に四度なのか、数のシステムを利用しよう。「27」を2×7すると14、1・4、1週間に4度である。そして27番目の文字、それは「ひ」である。三月五十一日に進むとは次年度に進まないという事であり、それは聖骸布に折りたたまれたことのあるキリストの誕生日が祝われることはないし、恋人たちの手のひらたちが重ね合わされる日が来ることもなくなるだろう(蜂起、裏切りのテーマ)。しかしもっとも避けられているのは、「27」、ふたつのなな、七月七日なのかもしれない。

唐突だが、この詩集では4大元素のうちひとつだけほぼ使われていない元素がある。「風」「地」「水」は繰り返しよくみかけるが、こと「火」に関してはほぼ目にすることがない。前に光と影にまつわる詩行を3行抜き出したことがあったが、せいぜいそこで使われている「焼き」「燃やす」が火に関連する語彙になるが、それにしても火が焼き燃やすイメージではなく、どちらかといえば光、強烈な日の光が焼き燃やすイメージにとどまっている。漢字の部首が火ではあるが、それにしても小さな火、せいぜい小火程度の火である。この詩集では火が避けられているのだろうか。いや、おそらく待たれているのではないだろうか。

公式によるとこの詩集の判型は210mm×90mm、それは短冊に似た形と言えよう。ここまでくると何が言いたいかわかってもらえると思うが、短冊を結びつける笹の木が必要。カバー写真には笹の木が写っていないだろうか。どうだろう。私にはそれを見分ける能力がない。そんなうろんな私の目に止まった最後の言葉は詩人の名である。こうして私は、私の手のひらたちは、この詩集のひとつの真理に到達したわけである。おわり。

これは蛇足になるが、彼の裏切りにあってカラス(カササギ。23ページ2行目)の跳ね橋を渡れなくなった(25ページ1行目)彼女は、天の川を水泳!(27ページ?行目)によって渡り切り、彼の部屋のある家に体当たりをぶちかますんじゃないだろうか(31ページ2行目)。