『双生』について語りたいがどうやって語ればいいかどこから語ればいいかどのようにはじめればいいかが難しい。まだまだ読み切れてないところがたくさんあるので語れる部分がすくないのもあるが、はじめの一段落については特にものすごく語りたい。あそこはかなり好きだ。『双生』にはじめて目を通した時、あの一段落を読んだ時、自分の目を疑った。情報ゼロの状態であの文章を読み始めた時、自分がなにを読んでるのかまったく見当もつかなかった。どんな作品でも多かれ少なかれはじめの一歩とはそういうもんではあろうが、ことに『双生』はそれが凄まじかった。私の大好きロブ=グリエ作品にはじめて触れたときも度肝を抜かれたもんだが、『双生』もまたそれだった。本が届いてはじまりの一行に目を通した時、私は三宅さんが狂ったんじゃないかと思いつつも、口元のにやけるのが止まらなかった。あそこだけでも何度読み返したかわからん。読んでる時、読んでる間、読んでる時間、まさに双つに引き裂かれる思いでしびれる。はじめの一段落についてここで語りたくてたまらないが、もうすこし温めて後日に送ろう。

そういうわけで『双生』についてどうはじめるかということばかり最近は悩んでる。『双生』において唯一たしかなことがあるとすれば、ほとんどなにひとつたしかなことがないということではないだろうか。こういう言い回しはなんというのだろうか。冗語法か?こういう何か言ってる風でなにも言ってない形ではじめるのは好みなんだが、後がつづかないな。