新潮の蓮實重彦の新作を読んだが、前作とおなじくひとつも面白くなかった。これはこのまま二郎サーガとして続けていく感じなんだろうか。それともまさかの芥川賞狙いの続編か。おれ様とかけっけっけという笑い方とか主人公の内面キャラが痛々しくて読むのがきつい。ある種のなろう小説のノリに近い痛ましさを感じる。岡田利規の新作戯曲も載っていたので読んだがこちらはめちゃくちゃ面白かった。SFシチュエーションの設定がすごくいい。人間に切れる人型ロボットのくだりは往年のダウンタウンのコントに近い可笑しさがあった。

前回『アル中女』はおしゃべりのない『銭湯』に近いといった感じに乱暴にまとめてしまっていた。どっちも酒飲んであちこち彷徨う展開ではあるんだが、アル中女は酒がメインで、銭湯は寄り道がメインといった印象だったので、実のところそんなに近くはなかったかもしれない。寄り道でいえばアル中女よりジャック・ロジェの映画の感触の方が『銭湯』には近かったと思われる。